着物が売れなければ、職人を守ることは出来ないし、この先の伝承はできません。
伝統工芸品の紬や趣味性の高い作家ものの友禅や型絵染めは、わかりやすいブランド価値と着る機会が比較的広範囲なこともあって、それなりに流通していますが、今、危機的状況を迎えているのは、分業制でつくられる高品質なフォーマル着物だと思います。分業制で各工程がそれぞれのスペシャリストによってつくられるという仕組みは、嫁入り道具一式としてフォーマルの着物を揃えるのが当たり前だった時代は良かったと思いますが、現在では次から次へと仕事が入ることもないでしょうし、職人が自分だけでどうすることもできない状況であろうと思われます。実際、後継者不足が一番危ぶまれているところです。
今、着物業界では、伝統の技を残し伝えようという様々な形のクラウドファンディングが立ち上がっています。協力してほしいといくつかオファーをいただき、私にできることでご協力させていただいているところもありますが、慎重に考えた結果、その金額を投資するなら、確実な目的をもって、自分が着用するものを発注し、その製作からできあがった後の着用シーンまでを「きものカンタービレ♪」でレポートするほうが明瞭でスッキリすると思い至りました。タイアップでなく、自分自身による自分のためのものです。
確実な目的、それは江戸時代の小袖の意匠の復刻です。
江戸時代は世の中が平和だった象徴のように、雛形という現代でいうファッション雑誌に類するものが誕生し世界に魁けて流行という概念生まれました。そして今日の着物は、江戸時代後期の小袖の形を踏襲したもので、その頃とほとんど同型となっています。
形状が決まっているゆえに、手間のかかる自然布が残っていたり、着物をキャンパスに見立てたような絵画的表現があったり、それを表現するために世界でも稀な技法があったりと、現代へとつづく多岐にわたる染織技法の源となっていると考えています。(朝香沙都子の私的見解です)
その時代には、今みても心躍る胸キュン♡な意匠があります。それを今につづく伝統の技で、今の時代に着る訪問着の意匠として復刻できないものだろうか…。
今年は結婚20周年。嫁入りのときに誂えたものが20年前とすると、そろそろフォーマル着物の誂えどきでもあります。というわけで、不特定多数でもネットでもありませんが、家の中でクラウドファンディング!?のような状態で、お誂え趣旨と流れを家の中でプレゼン。結婚20周年記念ということで長期計画でスタートさせることにしました。夫へのリターンは何だろう…(-。-;)
「KIMONO イマジンプロジェクト」を参考に、各社へ全て同じ予算で依頼するのがポイント。もちろん私個人のものなので、あんなに立派なものは難しいですが…、各社の志向もわかりますし、予算内でそれぞれの得意分野を存分に発揮してつくっていただけるとわかりやすいなと。
候補としたのは、男女の意匠の差別化があらわれた慶長小袖、着物の全面に大胆の意匠構成がされ左右比対称の寛文小袖、小袖の形状が定着したころの小袖、後に御所解文様といわれる江戸後期の小袖です。
一気にすべてをスタートさせることはできないので、まずは、この意匠を着たい!と思っていて、且つ、それを上手くつくっていただけるであろう仕事をしている京都の呉服屋さんに依頼しました。
つづきます^^/
〜 おまけ 〜
結婚前、着物はお稽古やお正月や式典などで必要に迫られて着るものだった私。結婚式のお色直しはあまり好きではなく、エリ松居先生にオートクチュールでつくっていただいたこの純白のウエディングドレスだけで結婚式、披露宴、二次会、三次会と過ごしました。
着物生活をしている今の私だけを知っている方からしたら想像できないかもしれませんが、当時はバリバリのコンサバファッションフリークでした。
:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
Facebookページに「いいね!」をくださる皆さまありがとうございます。