呉服屋さんといってもさまざまで、それぞれに得意分野があります。ならではのオリジナルのものをつくりづつけている老舗、顧客の好みを把握して問屋の展示会から集めるお店、工芸会や国画会などの作家ものを得意とするお店、日本各地の産地の紬などを得意とするお店、製造元がはじめたアンテナショップ、などなど…。その中で多種多様なものがあるのは百貨店だと思います。
百貨店では年に何回か外商顧客とお得意様のみの展示会があります。中でも充実しているのは、髙島屋の上品會と三越の三翔会でしょうか。
第32回 三翔会 三越染織逸品展 へ
ホテルオークラ別館のアスコットホールにて、今年は1日のみの開催でした。
アスコットホールは美術展も開催されますが、好きな会場のひとつ
日本伝統工芸展の会場でもある日本橋三越は、重要無形文化財保持者である人間国宝の作家をはじめとして、染織の至極の逸品を取り扱っています。
有職織物の喜多川俵二の夏帯…。いつか欲しいもののひとつです。
この展示会で気になるのは、こうした重厚感のある会場だからこそ、着ることができるというか、負けない重々しさがあるものでしょうか。
大羊居の地紙に四季草花の華やかな東京友禅に刺繍の逸品。こうしたものは着る場所を選びますが、そのバランスはこうした会場でないとわからないものです。
染と繍のきだの典雅な刺繍
截金の重要無形文化財保持者である故江里佐代子氏の生家です。
こちらの作品は江里さんを思わせますね…。というか、おそらくそうです。
広い会場にあって、けっして派手ではなく威厳がある帯
通過儀礼などに好まれる上品な付けさげ
御召や紬にあわせる洒落帯も素敵なものが♪
故森口華弘氏の一番弟子であった村山正夫先生と
蒔糊友禅に花のテイストは確かに森口華弘を受け継いでいらっしゃる…。20年前ぐらいまでの森口華弘の作品はすべて把握していらっしゃるのだそうです。
綴織の小泉紫泉先生と
作品もさることながら、先生も素敵(〃∇〃)♡
爪先で緯糸を引寄せて織る綴織の緯糸をわけて立体的な帯に仕上げていらっしゃいます。
こちらは緯糸を引き出してリボンにしている凝ったもの
昨年にひきつづき山岸幸一先生と大典先生もいらっしゃっていました
ホッコリするような暖かみがあるのに透明感がある紅花紬
至極の名品が並び押し売りされずみることができる素晴らしい展示会なのですが、こういった会は顧客のみの招待制であることが残念でもあります。外商顧客のプライドをくすぐるのかもしれませんが、これでは裾野が広がりません。2日間の開催にして外商顧客の日と一般も入場可の日をつくるとか、時間制にして夕方以降は一般にも公開するとか、いっそ一般からは入場料をいただくとか…。こういった会が伝統工芸展のように、できるだけ多くの人がみることができるようになると良いと思いますが、どうでしょう…(・_・;)?
ひとつのスタイルに固まらず、フォーマルから紬まで、場所や用途によってさまざまに楽しみたい方にはおすすめです♪
※撮影と「きものカンタービレ♪」への掲載の許可を三越呉服部よりいただいております。