いうまでもないことですが、百貨店の前身は呉服屋さんです。故にきものをただ商品としてだけではなく、その技や品質の維持と発展に尽くしているな…と感動することがあります。
それは髙島屋の上品會、そして三越の三翔会です。
「第31回 三翔会 三越染織逸品展」へ
日本伝統工芸展の会場でもある日本橋三越は、重要無形文化財保持者である人間国宝の作家をはじめとして、染織の至極の逸品を取り扱っています。
いくつかは呉服売場の特選きものサロンでも見ることができますが、これだけの作品群を一堂に会して見ることができるのはこの会だけです。
典雅なきものを着る機会は会場に負けないもので装いたいので、呉服売場や小さな会場で拝見するより着姿のイメージがしやすくわかりやすいと思いました。
百貨店は価格も高いというお話をお聞きすることがありますが、それは都市伝説のようなもの。三翔会の作品はもちろんおいそれと買えるものではありませんが(少なくても私は…)、こうして拝見していると、購入の際に電卓を叩かれるような行為がいかに品がないことかと、つくづく…。ここで撮影する行為もどうかとは思いますが、多くの方に知っていただきたいと思っておりますので、あえて許可をいただいております。
こんな工芸作家の作品を結城や塩沢にあわせて日常のオシャレとして楽しみたいです。←願望
こんな帯もつくっていらしたのか!と驚くほど、素晴らしいものがずらっと。
川島織物のビロード織の袋帯
経糸で陰影をだした油絵のような紫紘の袋帯
荻原いづみ先生の作品展
優しくも深い色に映える絵際の糸目糊の線。単彩でありながら広い会場にあっても印象強い作品。萩原いづみ先生のお父様は網干や麦の意匠で有名な人間国宝の山田貢。その技を受け継がれさらに女性らしい感性で新しい世界観を生みだされています。
私が魅かれたのは、鶸が描かれたこちらの帯。顔料がつかわれているのかと見まごうほど淡い色に力強さがあるのです。鳥の意匠はその視線の先が気になるのですが正面を向いているのも可愛らしい。
山岸幸一先生の作品展
植物染めに最も適している水を求めて米沢市赤崩の地に工房を構えられ、養蚕をし染料となる植物を育てていらっしゃいます。紅花餅をつかって真冬の雪の流水の川の中で冷し染めで染めるのが山岸先生の代表作である寒染紅花。煮染めをしないのが特徴。厳しい刺すような寒さの中で染めるからこそ冴えた美しい色をつくりだすとのことです。
約3kgの紅花が約200gの紅花餅になります。
紅花を摘む→川の清流で花洗い→花踏み(素足で踏むことによって紅花の黄色がジワッと抜けるのを感じる)→花むし(太陽光で発酵させる)→花きりかえし(花むしの途中で霧を吹く)→花つき→紅花餅。
植物の素材の美しさを出すために不可欠なのは絹糸。現在の糸や真綿は化学染料染め向けになっていてセリシンが除去されすぎているとのこと。ないものはつくるしかないからということで養蚕もされています。会場では山岸大典先生が真綿掛けの実演をしていらっしゃいました。
黄金色をした黄金繭。光沢がある白い糸になります。
黄金繭をぬるま湯の中で広げ蛹を取り出します。
繭は小石丸ほどの小ささ。広げるとこれぐらい。
円錐形の木台に30個ぐらい掛け、綿帽子をつくります。
綿帽子5個分を手紡ぎして糸にしたもの。空気を含んでいて柔らかいのです。
山岸先生のところから種分けされ日本橋で育った藍の花もありました。
植物染めでも媒染をしない藍染めには、藍の葉の生葉染めと藍の葉を発酵させたすくもがつかわれる灰汁発酵立てがあります。タデ科の藍がつかわれますが、藍の花は蓼と良く似ています。
一口に「きもの」といっても様々なものがあります。
日常生活の中でオシャレという楽しみで着るきもの、ガラディナーなどで華やかさが求められるもの、祝賀会や式典の格にあったもの…。ひとつのスタイルに固まらず、用途や場所にあわせて楽しみたいと思っております。それが365日きもの生活の醍醐味です♪
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「第31回 三翔会 三越染織逸品展」at ホテルオークラ 別館 アスコットホール
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