先月シルクラブにて開催された「いとなみの自然布展Ⅲ ~植物の力 人の知恵~」
自然と共存し、植物から布を生み出した人の知恵を知る、自然布レクチャー。
2013年北海道ではじめての伝統的工芸品として指定されたアットゥシ織(アッツシ織)
のお話を聞く事ができたとっても貴重な機会でした~♪
藤谷るみ子先生と
藤谷先生はオヒョウの樹の皮から樹皮を剥ぎ、煮て川で洗って乾燥させ繊維を取り出す
糸づくりから、織り、刺繍、仕立てまで全てお一人でやっていらっしゃいます。
アイヌは文字を持たない文化であったため、史料が残っていないのだそう。
最も古いものは江戸時代後期の「蝦夷嶋奇観」に記されたもので、オヒョウやシナノキの
樹皮繊維やイラクサでつくった服、鮭や鱒の皮をつないだもの、鹿や熊の毛皮などがあった
ことがわかるそうです。
アッツシにつかわれた木綿は日本本土から交易によって得た貴重品。
アッツシは晴れ着としてつくられた筒袖の装束。
男性、女性用の区別はなく、シナノキやオヒョウの樹皮からとられた繊維で織りあげられ、
木綿が貼られ魔除けとなる渦巻きや括弧文といわれるアイヌの文様が刺繍されています。
この渦巻き文様はフクロウの眼の意味もあるのだとか。
アッツシが帯として織られるようになったのは、わりと最近とのことなのだそうです。
独特の質感がありながらも以外にも他の産地のものと相性がよくて合わせやすい。
●アッツシ織の工程●
北海道平取町二風谷地区はアイヌ文化の遺跡や史跡が残っているところ。古くからの風習を
今に伝承するアイヌコタンが集まる地域として有名。アッツシ織もここで織られています。
原料となるオヒョウは、二風谷にあるというわけでなく、許可のでた国有林や道有林から採取。
水分の多い春先がいいのだそう。直径15~20cmぐらいのオヒョウの樹が望ましい。
こーんなに大きな樹から、クルクルと皮を剥ぐのにビックリ\(゜□゜)/
真っすぐ同じ幅で剥がないと良い糸にならない。これは重労働で男性の仕事。
採取したオヒョウの皮の外皮を剥ぎ取って内皮を内皮で束ねます。
この辺りは芭蕉布の糸づくりに似ていました。
樹皮を伸ばして乾燥させ(2日ぐらい干す)
木灰で煮ます。昔は沼や温泉につけて柔らかくしていたのだそう。
流水で樹皮のぬめりを洗い落とします。
いらないぬめりがあると糸が弱くなるそうで、ぬめりを落とす事がポイントだそう。
天日干にします。天日に晒す事で色が抜けるのだそう。雨にあたるのも良いのだとか。
アッツシ1反には1500gの糸が必要。
糸づくりは「はた結び」。喜如嘉の芭蕉布と共通しています。こちらはハサミをつかって糸切り。
糸玉をつくります。
織機にかける経糸づくり。糸伸ばし。
そして、驚くなかれ…。これが機織機なのです
経糸210本、上下の糸で300本ぐらい。35cm×9m。
糸がかけられるとこんな感じになります。
衝撃的だったのですが、織機は柱にくくりつけてつかいます( ̄□ ̄;)!!
腰機による織り。
経糸の間にペラといわれる大きなヘラをいれて織っていきます。
こんな感じ。
織り進むと前進していく形になります。
織りあがるとハサミで裁断。残りの糸は仕立ての縫い糸にするのだそうです。
う~ん、やはり自然布はその糸で仕立てるのが自然なのかも…。
木綿布を貼り刺繍の糸を染め仕立てます。
※工程の映像はアイヌ文学研究者の萱野茂氏の監修でつくられたもの。
藤谷先生に許可をいただき、レクチャーでの上映とわかるようにご紹介させていただきました。
仕立てあがったものがこちらのアッツシ織♪
水に強く通気性に優れたオヒョウの樹皮繊維。
想像していたよりも固くはなく思っていたよりも軽かったです。
刺繍につかわれている糸は黄檗とハスカップで染められたもの。
藤谷先生がご主人のためにつくられたという貴重なものですが、羽織らせていただきました♪
こちらは揃いの籠手。
袖口や裾の文様は悪い霊が入り込まないように、魔除けの意味があります。
この文様で道内のどこのものかわかるのだそう。サハリン(樺太)にもあり。
祈りが込められ思いがズッシリとつまった装束。
大変貴重な経験をさせていただきました。ありがとうございましたm(_ _ )m
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いとなみの自然布展「アイヌの文化と織物 〜アッツシ織〜」at シルクラブ
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