日本きもの学会産地実地研修 奄美大島レポートです
(^-^)/ 前回はこちら☆
さて、どのようにまとめていくのが見てくださる方にわかりやすいものか…。
まずはサラッと本場大島紬について説明することにします。
本場大島紬には、奄美大島、鹿児島市、宮崎県都城市の3つの産地があります。
製造工程はほぼ同じですが、産地によって特徴があり、組合は各産地別にあります。
各産地で共通する本場大島紬の定義は、
①絹100% ②先染め手織り ③平織 ④締機による手作業での絣加工 ⑤手機で絣合わせ織りあげる
現在の大島紬は、紬といわれますが紬糸ではなく本絹糸がつかわれています。
それによって、軽くてしなやか、そして独特の艶やかな光沢のある布になったのです。
奄美大島でつくられる大島紬は、何といっても泥染めが中心。
鹿児島産は色大島、白大島、都城は草木染めや色大島が多くなります。
奄美大島紬の要である泥染めの見学に龍郷村にある金井工芸へ
金井工芸の金井一人社長と
1720年(享保5年)薩摩藩が、奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島の4つの島に
「与人・横目・目指・筆子・掟までの役人には絹布着用を許すが下の者には絹布着用を一切許さず」
として「絹布着用禁止令」を下したことから、当時から絹の大島紬が一般に普及していた
ということが伺えます。
この頃の大島紬は手績みの真綿紬糸で織られていたようです。
薩摩藩の役人から隠すために泥田に沈めたら、美しい烏の濡れ羽色に染まったのが
泥染めのはじまりともいわれています。
伐採されたテーチ木(車輪梅)の山。
伐採して2週間以内につかわないと染液がでなくなってしまうのだそうです。
こちらは奄美名瀬港近くの道路脇に咲いていた車輪梅の花。もう終わりかけでした。
泥染めでつかう車輪梅は樹齢30年ぐらいのもの。奄美大島産のものがよく染まるのだそうです。
伐採したテーチ木はチップ化されます。泥染めにつかうテーチ木の量は大量( ̄□ ̄;)
テーチ木は季節、山にあるもの、海にあるもので色の出方が違うのだそう、現在は植林も
されています。
約600gのチップを2000ℓの水で2日間かけて煮だします。
通常の草木染めとの違いは、染液を常温に戻してからつかうこと。
かなり強烈な臭いがします。常温に戻すことによって発酵されているのかな…?
大島紬の絣筵です。
大島紬の経緯絣の糸染めは、地糸の経糸、緯糸、絣筵の経糸、緯糸の4種類の糸を
染めることになります。白から泥染めの黒になるのに1週間~10日間ぐらい。
4種類の糸を染めあげるには1ヶ月以上かかるのだそう( ̄□ ̄;)!!
緯糸の絣筵は暖簾状になっていて経糸の絣筵にはミミがない。
地糸の染色です。
テーチ木を煮だした染液で30回染めます。
糸は水に濡らさずそのまま染液をかけます。
ただ浸けるのでなく揉み込む。
染液は一度つかったら絞って捨てて新しい染液で染めます。どんだけ車輪梅が必要なんだか
テーチ木の染液に含まれるタンニン酸を定着させるために、タンニン酸が無くなったら
捨てて新しい染液をつかうということを繰り返すのだそう。
3回揉み込んだら石灰で中和させます。
こちらは、テーチ木で染めた後に泥染めをした絣筵。
テーチ木染めを30回繰り返し乾燥させてから、泥田で染めます。
泥田で染めてから再びテーチ木で10回以上染めてさらに泥田への繰り返し。
トータルでテーチ木染めは80~120回、泥田は4回ぐらいになるのだとか。
泥染めは絣が少ない無地場の多いものの方が誤摩化しができず難しいのだそう。
う~ん、ここでは泥染めの大島紬を里帰りさせてあげれば良かったかな…。
金井工芸の工房の隣にある泥田です。
大きなイモリが泳いでました
泥は粘土質で粒子が細かいのが特徴。粒子が細かくないと絹糸が毛羽立ってしまうとのこと。
奄美大島の円形が美しい赤尾木湾は隕石が落ちて形成されたという説があるそうで、
奄美クレーターといわれています。それによって龍郷村の泥田には良質の鉄分が含まれて
いるのでは?というお話があったのですが、直接の因果関係はないそうです。
それよりも、泥田に含まれている微生物による効果が重要で、ここの泥を別な場所に持って
いって染めても同じような美しい泥染めになることは決してないのだそうです。
こちらの四角に覆われているところに泥を入れて足でかき回しながら濃度を調整し染めます。
糸の間に入るように揉んだり叩いたりしながら2時間かけて染めていきます。
これを1週間に3回ほど繰り返すとのこと。
絣糸の本数で泥の濃度は調整。目が細かい絣は濃すぎると泥が入っていかないのだそう。
一度はじめると2時間つづけなければならないそうで…、見学にはその時間がなく、実際に
染めている現場は見られませんでした。残念!
泥染めをした後の絣筵の一部をいただきました。
この太い1本の糸は16本の束になっています。同じ絣糸が16反分つくられるということ。
こんな美しい絣糸になるのです。綿糸で締められていたところが染め抜かれています。
こちらは貴重な泥藍大島の緯糸の絣筵
このケバケバしている糸が締機で織られた綿糸。
これを解く工程を「バラ裂き」といいます。
藍で下染めをしてからテーチ木と泥田で染めたもの。絣の部分が藍色になります。
う~ん、美しい 泥藍大島紬もいいなあ:*:・( ̄∀ ̄)・:*:
泥田の見学が終わった頃、地糸のテーチ木染めが終わり乾燥させているところでした。
伝統工芸品の実演はさまざまなところで行なわれていますが、奄美大島の光と空気、そして
この泥田はここに来なければ見られないもの。次の日は大雨だったので、この日がお天気
だったのも幸運でした♪
さて、もうひとつ、大島紬の産地でなければ絶対にみられない、工程見学へ向かいます(^-^)/
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大島紬 泥染め見学 at 金井工芸 日本きもの学会産地研修 / 奄美大島&鹿児島の旅 その2
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