日本全国の染織産地巡りで、動いていないたくさんの力織機を目にしています。場所もとり元手もかかっていそうなたくさんの力織機…。一昔前のように需要がないからなのでしょうけれど、長浜や秩父では、今は動かせる人がいない…というお話もお聞きしました。
着物の価格には、ピンからキリまで色々ありますが、多くのものは消費者の手に渡るときは目を剥くほどの高額なのに、それをつくる職人の方へはそれに見合わぬ低賃金。ゆえに後継者不足になり現役で働く職人さんのほとんどが70歳を過ぎています。
動いていない力織機だけでなく、今は動いている力織機も、職人がいなくなればさらに無用の長物となってしまうのは必定です。
自分が着たいものが市場から無くなってしまうかもしれない…。着物生活をしている身としては、数年後が不安でなりません。またその気持ちを煽って、こちらに購入させようとする販売にも辟易しています…。これが最後とか、もうつくられないとか…(ノ_-。)
手仕事系の手織をやりたいという人はたくさんいますが、力織機を動かすとなると工房というより工場で大きな機械を調整し動かすことになり、その経験が必須となります。それは自宅でできる趣味の延長のような手仕事では収まらず、社会人として分業制の一環の技術的な仕事になるので、お稽古事感覚ではすまないのが、さらに後継者不足への問題でしょうか。
実際のところ、手織りの紬は各産地で女性によって伝承されていることが多いですが、染めのために必要な良質な白生地は圧倒的に少なくなっているのが現状かと…。
昨年の京都マラソンの日、「KYOTO DESIGN WEEK」というイベントの一環で工房見学させていただいた、西陣の「りんどう屋」という機屋さんが、twitterで、
「西陣織を習いたい、将来的に仕事にしたい方を募集します。ただし最初の半年は給与的なものも出ませんし、その後の仕事を保証はできません。ただ、この西陣織の職人が減りゆくなか、将来的に技術を覚えておきたい方に無料で教授いたします。」
と募集されたところ、賛否両論が繰広げられています。
先月、西陣織工業組合による「力織機研究会」で、織機の種類、名称、構造、といった基本的なことを教える、という試みがありましたが、おそらくこの情報は多くの人に知られていなかったと思います。
が、< 無給 >という文言のパンチが効き過ぎたのか、今回のりんどう屋さんの募集は炎上といわれるぐらい拡散しています。この話題性はもしかしたら起死回生になるのかもしれません。
個人的には、組合でも機元(メーカー)でもなく機屋さんが、技術の伝承を危惧して行動にでたことに興味をもっています。色んな意見があるでしょうけれど、技術が立ち消えてしまってから復興するのは容易ではありません。<まずは技術を身につけたい>という人には大きなチャンスでもあるかと。70歳以上の高齢の方々に頼らざるを得ない状況であるということは、技術を身につけた若者が数年後にはグーンと大きくなる土壌でもあるのです。
「もうつくられない…」と、ただ着物エンドユーザーに購入を煽るような着物業界の人は、こうした試みをする職人の爪の垢を煎じて飲んだらいかがと…。思うぐらいです。
技術を伝承したい人 と 身につけたい人がうまく繫がりますように、と願わずにはいられません。
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