天鵞絨(ビロード)と別珍(ベッチン)。
漢字で書くと文豪の小説にでてくるような重みがあります。どちらも光沢感のある添毛織物です。パイル織物ともいいます。パイルとは下地から出ている繊維のこと。織った後の処理の仕方で、ループをそのままにした輪奈織とループをカットしたものの2種類に分類されます。そして、経糸、緯糸のどちらでパイルをつくるかによっての違いがあります。
ビロード、タオルは、経糸でパイルをつくる毛足の長い経パイル織。
ベッチン、コーデュロイは、緯糸でパイルをつくる毛足の短い緯パイル織。
【生地別の詳細のまとめ】
輪奈ビロード(天鵞絨)◇ 素材は正絹100% / 11.5mの生地が650g / 軽くて暖かい
ベルベット◇ 素材はレイヨンパイルがほとんど。正絹より重い。
ベロア◇ 2本の糸を引き揃えて編み1本を引きだしパイルをカット。伸縮性があるのが特徴
ベッチン(別珍)◇ 素材は綿 / コットンベルベッドともいう
コーデュロイ◇ 素材は綿 / 縦うねが特徴
きものコートはビロード、ビーズ刺繍のバッグ地はベッチンです。
ビロードは13世紀のイタリアにて発祥したといわれています。経糸もしくは緯糸でパイルをつくり、そのパイルの先端をカットすることにより毛羽を表した添毛織のひとつで、表面が滑らかで艶のある光沢があり軽くて暖かなのが特徴。
日本への伝来は、ポルトガルから鉄砲が伝来した際の鉄砲が包まれていた布がビロードだったといわれています。
その後オランダ船よりもたらされたビロードの中にパイルをつくる銅線が残っていたことがヒントとなり、パイル織の織り方が解明され、江戸の慶安年間から西陣で生産されるようになりました。のちに西陣より長浜へ伝えられ、江戸時代末期には彦根藩によって手厚く保護されたのだそうです。その後ジャガードによる紋織が始まり、ビロードの肌触りを着尺地に生かす工夫がされ、輪奈ビロードのコート地がつくられるようになり、今に至ります。ビロードはポルトガル語のvelludoが訛ったもの。天鵞は白鳥のことで絨は織物のことを意味します。ちなみに日本の伝統色の天鵞絨色は深みのある暗い青緑色です。
天鵞絨はきもののコート地としてよくつかわれます。
全身が黒尽くめの装いは、素材感に違いをもたせるのが良いように思います。
ジャマン•ピュエッシュのベッチン地にビーズ刺繍のバッグ
添毛織物の濡れたような光沢感には、暖かみと品があり落ちつきます。