数多ある世界中の民族衣裳の中でも、布地をキャンバスに見立てて絵画的に纏うことができるものは、着物だけだと思います。それを強みに世界196カ国をテーマとした着物と帯を制作しているのが、社団法人イマジン•ワンワールドのきものプロジェクトです。
きものサローネ2016の最終日に、53カ国の着物と帯が披露されました。第一部のチケットは売切れで買えず…(第二部はお願いして無事購入♪)だったのですが、運営側の方のご好意でプレス発表から入れていただくことができました。
このキモノプロジェクトは地方の呉服屋さんが中心となってはじまったもの。
この方です。久留米市で創業78年の蝶屋三代目の高倉慶応さんと
196カ国の着物と帯を2020年までに制作する。
着物、帯、といっても、着物にも様々な技法があり産地があり染元や製造元、作家も多彩。それが一所にこだわらず、日本全国から参加しているというのが素晴らしい。
そして制作費は、着物100万、帯50万とすべて一律となっています。(+諸経費50万)
売るためのものではなく、ひとつの国を表現するための着物と帯。
高名であるところも、若手の染織家も、すべて同じ制作費と決まっているのは、つくり手の技量が試されることとなります。なのでどの作品も経費を度外視した素晴らしいものになっています。
テーマの国を表現するために、その国の地理や歴史、文化、自然、伝承など、深く探究し開花させたものとなっているのです。
会場ではたくさんの制作者の方にお会いすることができましたが(これがすごかった!)、皆さま同じことをおっしゃっていました。
「制作していてとても楽しかった」っと。
今の着物業界は、リスクを負わないモノづくりが主流となっていて、つくり手の本来の想いや美しさを追求したものがつくりにくい状況のように感じています。
そんな中で、皆さま本領発揮ができたのではないでしょうか。
会場では、日本全国から製造元やつくり手の先生方がいらっしゃっていました。つくり手は自分が制作したもの着姿をみる機会はあまりありません。晴れ舞台でみることができて皆さまとても嬉しそうでした:*:・( ̄∀ ̄)・:*:
今回のファッションショーで何よりも感動したのは、ショーの中で着物と帯の詳細な説明がなされたこと、そして制作者の紹介があったことです。
紹介のときは感動して涙が…(ノ_・。)
エジプト•アラブ共和国の着物は、ライン川に見立てた縦のラインにヒエログリフ、そして草原には鳥も。すべて絞りの技法でつくられています。
帯は石川つづれの爪掻本綴れ。綴織はエジプトのコプト織が起源とされていますので、このあたりも拘りがあるのだとしたら素晴らしい〜。
絞り作家の福村廣利さん。モデルのランウエイをとても嬉しそうにみていらしたのが印象に残りました。
紫紘の野中淳史さんと
10日ほど前にお会いしたとき、「ヨルダンの帯をまだ織っている最中」とお聞きしていたので、間に合うのかな…とお聞きしたほうがドキドキしました(;^_^A
着物は加賀友禅の上田外茂治さん
帯は紫紘
ヨルダンといえば…まさか、あの遺跡?といっていたらまさにそうでした。ペトラ遺跡にヨルダンの国家であるブラックアイリスの意匠の帯です。
紫紘は他にもたくさんの帯をつくっています。
ドイツ連邦共和国の帯は、スポンサーでもあるシュタイフ社から頂いたというテディベアにバームクーヘン
着物は染色作家の林克彦さんによるもの。ベートーベンの月光の律動と矢車草
ミャンマーの着物を制作された、東京友禅の水橋さおりさんと
水橋先生はミャンマーまで取材にいかれて、パダウの花とミャンマーの神話、民俗文様をデザインにとりいれています。
帯の制作は赤松潤一さん作の佐賀錦
ミャンマーのパダウとタジンの花が華文となったミャンマー宝相華の佐賀錦
おび弘の池口寧祥さんと
ロシア連邦の着物は、日本で唯一の技法である飾り錦。佐賀錦の生地を切り出して切り嵌めのようにとめていく技法。小島敏男さん、松田倫道さんの制作。
帯はおび弘の手織の本袋帯。エルミタージュ美術館の装飾と外観がが両面に織りあげられています。
つづきます(^_^)/