展示会シーズンの秋です。
きものが好きな人は、まずは様々なきものがみたいと思います。ですが呉服屋さんや展示会でみせてもらうと、中々手ぶらでは帰りづらい…。わかります…。
良いものほどであればあるほど、お安いものではありませんし、きものを長く大切に楽しんで着るからこそ、私は即決では買わないほうが良いと思っています。それを売らんがために「今日だけ…」などといって電卓を叩くようなところは信用しません。
なぜなら、きものはお洋服とは違って、購入したその日のうちにお持ち帰りをして着るようなものではないからです。
まず着る人のサイズに合わせたお仕立てがあります。そしてお手入れ。着ていれば、裾が切れるのは当たり前ですし、体型が変わればお直しもしなければなりません。
きものがお安いものではないのはつくるのに人の手間がかかっているから。それだけ手間をかけてつくられたものなら、できるだけ長く着たいし、できれば次の世代に譲り渡したいものです。
白生地を後染めしたものは染め替えができますので、派手になってしまったと思ったものでも、色を変えることができます。色無地はもちろんですが、訪問着のような柄があるものでも、上から色を掛けたり、柄の部分を糊伏せして地色だけ変えることも可能。きものとしては派手になっても羽織にしたり帯につくりかえることもできるのです。
そういったことにも対応してくださる呉服屋さんは、まず「今日だけ…」などという、お客様を追い詰めるようなことはしません。電卓で叩いて値引き交渉のようなこともしないと思います。
その辺りを見極めて、自分にあった呉服屋さんとのお付き合いができると良いですね。
まずはみるだけ…、という方におすすめするのは百貨店の呉服売場です。
日本橋三越と髙島屋はどちらも元々は呉服屋。常に品揃えが良いとはいいませんが、眼を肥やすには最適なところです。そして呉服売場の奥まったところにある、特選呉服売場は押し売りされることもありません。気兼ねなく作品を鑑賞することができ、価格は電卓で値引くような謎なこともないので、すぐに購入することはなくても購入する際の目安になります。その道の一流の先生方の実演や講演があったりまずは色々なきものをみてみたいという方にはおすすめです。
日本橋高島屋の呉服売場では、東京友禅の「小倉貞右•隆 」展が開催中(〜25日まで)
小倉先生は東京友禅の伝統を礎に独自で開発された真糊に近い仕上がりになるゴム糸目糊を使った、写し糊糸目技法によって(地染めを挿し彩色よりも先に行うそう)手描友禅を創作されています。
来年の干支である酉年にちなんだ帛紗の金彩筒描き加工を実演中
手にしているクラッチバッグの代わりの数奇屋袋は小倉貞右先生の作品です。
小倉貞右先生と隆先生と
催事場では「四代 龍村平蔵 襲名10周年」展が開催中(〜24日まで)
髙島屋と代々の龍村平蔵がつくりあげてきた「龍村錦帯」の代表作が展示されています。
嵯峨御家流の生け花との競演となっていますので、美術鑑賞の気持ちでみるだけでも眼の保養になります♪