「紬織」重要無形文化財保持者である佐々木苑子先生の作品の全貌を知ることができる展覧会が
群馬県立近代美術館にて開催中です。(~ 6月21日まで)
東京から高崎まで新幹線で1時間。高崎からタクシーで20分。
群馬県立近代美術館は明治百年記念事業の一環としてつくられた26.2ヘクタールもある
巨大な群馬の森の一角にあります。
この地は戦前は陸軍の火薬製造所があったところなのだそうです。
正直なところ、遠すぎる…と思っていたのですが、行って良かった!!!
1人のきもの作家の約半世紀に渡る活動の全貌を知る展覧会というのは滅多にありません。
かつて佐々木先生から「1作品織りあげると次はこうしたいと思って目の前のことを
追いかけるように繰り返し作品づくりをやっている。生涯できる仕事はかぎられているけれど、
生まれ変わっても織物を織りたい。」という熱い思いをお聞きしたことがあります。
こうして作品を一堂に会してみると、年代を追うごとに変化があり、織物に対する真摯な姿勢が
ズッシリと伝わってきます。感動いたしました。
絵画的な曲線が織りだされた絵絣。
伝統的な絵絣は藍地に防染された白が映える木綿のきものが主流ですが、佐々木先生は
強靭で光沢があり着心地良く織りあがる絹糸をつかい、植物染料で染めた絵絣の紬織の
世界を切り開かれました。
藍地に白抜きの絣は色彩の対比がハッキリしていますが、草木染めは絣の色の対比が
難しいものです。しかしそれを生かし芸術的であり且つ自然が放つ豊かな色彩溢れる作品を
つくられています。
展示室は作品の保護の為に照明が暗く落とされています。
草木染めは堅牢度が弱く退色の心配があるのです。
ですが、空間が広くゆとりある展示なこともあって、しばらくすると眼が慣れてきました。
するとこのほうが自然なのではないかと思い至りました。
化学染料のない時代には電気をつかった照明はなかったはず。
自然が生みだした色の持つ光なのか、絹糸のもつ光なのか…。
光と空気までもが織りだされているようです。
「あくまでも素材が主役。糸がどうして欲しいのか、染料も五感で判断して、
この世にはじめて生まれるものをつくりだす」とは佐々木先生の弁ですが、
時代の空気までも読み取ったような作品の数々でした。
作品の裂地に触れることができるコーナーもありました。
美しい織物…、眼だけでなく指先で感じたくなるものです。
こういった機会はとっても貴重。経糸と緯糸、そして打ち込み…。この感覚を覚えていたい。
※私の首から下がっているのは、撮影許可証です。
絵絣の題材に鳥が多いのは、一つの場所に留まらない永遠性と大陸を渡るエネルギー、
そういうものに託す気持ちの現れなのだそう。
私も鳥が好きです。実は鳥に魅かれる理由も同じです。
産地が背景にあるわけではないから、すべての工程を自分が覚えて1人でしなくてはならない…。
知性と情熱がなくてはできないことです。
佐々木先生の作品に強烈に引寄せられるのには、深い熱意と精神力、そして高潔な作品づくり。
ああ、本当に来て良かった:*:・( ̄∀ ̄)・:*:
所蔵は個人蔵のものがほとんど。
これだけの作品を一堂にみることができるのは最後かもしれません。
きもの好きの方、この機会を見逃さないでください。遠出しても見るだけの価値はあります。
今週の日曜日までです!
※撮影と「きものカンタービレ♪」への掲載の許可を群馬県立近代美術館さまよりいただいております。
「きものカンタービレ♪」のFacebookページ
↧
「佐々木苑子 〜絵絣紬に生きる〜」展 at 群馬県立近代美術館
↧