~いつの時代も「能」はあこがれ~
練馬区文化振興協会と武蔵大学の主催による「能」をめぐる文化史の公開講座へ
この公開講座は2回連続講座として武蔵大学にて開催されたもの。
先週は「能にあこがれた歌舞伎」をテーマに、武蔵大学の漆原その子先生によるお話でした。
丸山先生のお話の中でもありましたが、歌舞伎と能は同じ芸能でも方向性は対照的、
傾く(かぶく)ことが原点である歌舞伎は能という伝統とは違うはず、こちらもお聞きしたかった!
丸山先生のお話は、まずは装束の成り立ちとして全体を三期にわけ考察。
室町期には左右対称で模様で埋め尽くすものだった装束が、桃山時代に決算期を迎えたこと。
小袖が下着であった時代は意匠は男女で明確な違いはなく肩裾形式や段替わりの構成。
小袖中心の衣生活が一般化すると江戸時代の慶長年間を境に激変し左右比対称になっていく。
この服飾の転換期の重要性が説かれました
能装束は織りだけでなく摺箔と繍の技が駆使され発達していきますが、摺箔の型をつかう
技から型染めである小紋ができ素襖という武家装束が生まれ肩衣袴に継承されていく。
武家装束は絹の直垂から家紋を大きく染めつけた麻の大紋、そして小紋染から素襖が
日常着として定着していく。こういった関連性のお話もあり。
能装束は、武家系、公家系、小袖系と大別できる。
武家系の衣服は袴の中に入れる(直垂、大紋、素襖) 公家系は袴に入れない(直衣、狩衣)
しかし、視覚的効果のために装飾は華美になり、長絹や舞衣のように能の世界で創案
された装束もあり、など…。
能装束に見られる括りと成り立ちからわかる衣文化の系譜のお話でした。
そして、能由来の文様のお話は、スライドで雛形や装束をみながらの解説。
黒川能の装束や貴重な史料もみせていただいたのですが、公開は控えます。
謡曲に関連した意匠は頻繁に用いられ定番化したものがたくさんあります。
菊慈童の菊水、石橋から獅子と牡丹、竹生島から波と兎、天鼓から鼓と滝、など。
これら全部を盛り込んだ小袖もあるようで…。面白いですね(゚ー゚;
※講義中の撮影及び「きものカンタービレ♪」への掲載の許可を、丸山先生と主催者
の方よりいただいております。
丸山先生の講義は内容がギッシリ充実していて1時間半で詰め込むには中々大変ですが、
日本の民族衣裳であるきものを真の意味で理解する糸口となるお話ばかり。
丸山先生をはじめ、人間国宝の作家の先生方、老舗百貨店の呉服部長、きもの業界の
第一線で活躍される方々が講師をされる、染織文化講座が7月26日より開講されます。
詳細はこちら「染織文化講座」
http://kimono-bunka.net/
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丸山伸彦先生による「能装束と能由来の文様」のお話 at 武蔵大学
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